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「計算機統計学」第20巻1-2号 目次・要旨

会長就任挨拶

計算機統計学のこと
白旗慎吾

論文

縮小推定量におけるブースティングの効能
元垣内広毅・白旗慎吾・後藤昌司
AHPとSEMを用いた予備校教員の指導力評価システムの提案
松井大祐・朝日弓未・山口俊和
用量反応試験のための逐次型多重比較法の開発と比較研究
中村智洋・道家暎幸・山本義郎
主成分分析における回帰代替による変数選択方法
許明會・丁恩亞・崔承培

総合報告

数理計画法による判別分析の10年
新村秀一

学会活動記事

日本計算機統計学会第20回シンポジウム報告
塚田良雄・正木朋也
日本計算機統計学会第21回大会報告
塚田良雄・正木朋也
欧文誌掲載論文概要: J. Japanese Soc. Comp. Statist., 19(1), 2006
越智義道・濱崎俊光

関連学会記事

ISI2007参加記
久保田貴文
縮小推定量におけるブースティングの効能
元垣内広毅・白旗慎吾・後藤昌司

回帰解析における主たる狙いのひとつは, あてはめる回帰関係のうえでデータの内容・構造の把握および解釈を与えることである. これは, 推定の問題といわれ, どの説明変数が重要な効果をもつかといった評価の観点が主体となる. そこでは, 説明変数の選択およびパラメータの推定が目標となり, 最近では, この二つの 目標を同時に満たす縮小推定量として, 非負圧縮推定量(Non-negative garrote)が提案されている. 他方, 諸種のアンサンブル学習法が提案され, 任意の弱い機械学習器を組み合わせることによって, 強力な性能を保持する学習器として, ブースティング法が開発され大きな成功を収めている. 本稿では, 縮小推定量である非負圧縮推定量にブースティング法のアルゴリズムを導入し, パラメータの推定量の安定化をはかる方法論として, 縮小推定量にブースティングを加味する2種の方法を提案し, 数種のシミュレーションによってその効能を評価した. その結果, 縮小推定量にブースティング法を導入することで, パラメータの推定量の安定化が達成された. さらに, 提案した方法の強みを示すとともに, その適用の限界も明らかにした.
AHPとSEMを用いた予備校教員の指導力評価システムの提案
松井大祐・朝日弓未・山口俊和

本研究では, 教員の指導力不足問題に着目し, AHPとSEMを組み合わせた指導力評価について提案する. 評価には評価者の主観が入ってしまうが, 複数の人が同じような評価をすれば, 客観的な評価として捉えられる. そのため, 複数の回答者の意見を集約する方法として. AHP(Analytic Hierarchy Process) とSEM(Structural Equation Modeling)を用いた. AHPは, 主観的判断とシステムアプローチを合わせた問 題解決型意思決定手法のひとつであり, 少ないデータでも分析を行うことが可能である. SEMは, 因子スコアの推定ができ, 個々の被験者に対する評価が可能という利点がある. 経営者, 教員のアンケートは標本のサイズが小さいのでSEMを用いての推定が難しい. そこでAHPとSEMを組み合わせて, 経営者, 教員, 生徒による教員の指導力評価に対するアンケートから, 教員を評価する.
用量反応試験のための逐次型多重比較法の開発と比較研究
中村智洋・道家暎幸・山本義郎

用量反応試験において, 用量の増加に伴い, 効果が現れる最小用量を検出するための多重比較法がある. この多重比較法は, 事前に設定した全ての用量について, 得られた全ての観測値をもとに, その検定を行うために用いられる. しかし, 各用量での観測値が容易に得られない場合や少ない観測数で早い結論を得たい場合, 用量を徐々に増加させ, それに伴い得られた観測値だけで, 逐次的に効果最小用量を検出する方式の開発は意義があると思われる.
本論文では, 各段階で反応の母平均間の対比を用い, 反応の変化を逐次的に調べながら, 効果最小用量を見つける逐次型対比法を提案する. シミュレーションでは, 既に開発されている逐次型Dunnett法と逐次型対比法を検出力に関して比較する. また, 事例研究では, コンクリート工学におけるモルタルの流動性に関する用量反応試験に, これら2手法を適用する.
主成分分析における回帰代替による変数選択方法
許明會・丁恩亞・崔承

主成分分析は次元縮小を通してp(≧3)個の変数の連続型データを視覚化する技法である.その結果, n個の個体はk(=1,2,3,…)次元の主成分得点と表現される. 本研究の目的はp個の全ての変数から生成されたk次元の個体プロットを最もよく説明できる一部のq(≦p)個の変数を探し出す方法を開発することにある.または, 変数選択のために主成分得点に対する回帰適合と代替技法を活用したアルゴリズムを提案する.



数理計画法による判別分析の10年
新村秀一

1997から, 数理計画法を用いた判別分析の種々のモデルを研究してきた.
最初, 整数計画法(Integer Programming, IP)を用いた誤分類数最小化(Minimum Misclassification Number, MMN)による最適線形判別関数(Optimal Linear Discriminant Function, OLDF) のIP-OLDFと線形計画法(Linear Programming, LP)を用いた誤分類されるケースの判別超平面からの距離の和(L1ノルムという)を最小化するLP-OLDF という2つの判別モデルを考えた. IP-OLDFは, データと判別係数の両方の空間で解釈できる. このため,判別係数とMMNの関係, MMN調減少性, MMNる他の判別関数の評価などが行えた. しかし, 整数計画法を用いているため計算時間がかかることと, 一般位置にないデータ(Haar条件を満たさない)で問題もわかった. LP-OLDFは, この分野で広く研究されているL1ルム型の判別モデルの一種である.
2003年に, LP-OLDFで得た解を参考に, IP-PLDFの探索領域を狭める高速なIPLP-OLDFを開発した.
2005年以降, マージン概念を導入した改定IP-OLDFを考えることで一般位置にないデータにも対応できた. これによって, 2万件の正規乱数データとリサンプリングデータを用いた評価が可能となった. SVMとの比較を行うことで, ソフトマージン最大化SVMが, 改定IP-OLDFを用いて, サポートベクタに選ぶケースを逐次選択する高速なアルゴリズムを考えた. これを用いると, ソフトマージン最大化SVMより良い結果, 場合によりMMNによる判別でないにもかかわらずMMNを選ぶ ことが可能になった. また, MMN を用いた新しい変数選択法を提案する.
これとあわせて, 数理計画法による判別モデルの歴史を概観した.



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