JSCS_logo JSCS caracter_logo  
JSCS Kanji_logo    
   
      
I

「計算機統計学」第19巻1号 目次・要旨

論文

アンブレラ処理群と対照群の対比較法
星野直人
関数データの判別分析―線形的手法と関数部分空間法―
Dou Xiaoling・白旗慎吾・坂本亘
改定IP-OLDFによるIP-OLDFの問題点の解消
新村秀一

総合報告

ALL-IPによる高性能計算システムアーキテクチャ
宮澤君夫・門岡良昌

学会活動記事

日本計算機統計学会第19回シンポジウム報告
藤崎恒晏

関連学会記事

COMPSTAT2006に参加して
石岡文生
アンブレラ処理群と対照群の対比較法
星野直人

一元配置において, 複数の処理群を1つの対照群と対比較するための多重比較法としては, Dunnett法がよく知られている. 本論文では, データが正規分布に従うと仮定でき, さらに事前情報として各処理群の母平均間にアンブレラ順序がある場合を扱う. アンブレラとは, ピークと呼ばれるある処理群まで母平均が増加し, その後 減少するという順序のことである. このようなDunnettタイプの多重比較問題において, アンブレラ順序のもとでの各処理母平均の最尤推定量と対照群の標本平均の差に基づく検定統計量を利用する対比較法を提案し, 各処理群のサンプルサイズが等しいバランスケースについて最大 type I FWE (familywise error rates)を満たすように臨界値を算出する. さらに, モンテカルロシミュレーションを用いて, 多重比較における検出力の1つである総対検出力をDunnett法と比較し, 提案法の有効性を明らかにする.
関数データの判別分析―線形的手法と関数部分空間法―
Dou Xiaoling・白旗慎吾・坂本亘

関数データの判別分析には, フィルタリング法をはじめ, 正則化判別分析や関数線形判別分析などの線形的手法が提案されてきた. しかし, 教師データの数が少ない場合や, 各クラスが共通な共分散行列をもつ正規分布に従うと仮定できない場合には, 線形判別分析が必ずしも有効とは限らない. 本稿では, 非線形の判別分析の一つとして関数主成分分析の基底展開アプローチを用いる関数部分空間法とそれと同じアイデアで構成された関数CLAFIC法を提案する. 関数部分空間法と関数CLAFIC法のメリットとしては, 母集団の潜在分布を知る必要がなく, 従来の多変量の主成分分析による部分空間法より, 必要とする教師データが少なく, より速く解析できることが挙げられる. 関数部分空間法と関数CLAFIC法の有効性を確認するために, フィルタリング法との比較を行った. これらの手法の解析結果を比べてみた結果, 関数部分空間法, 関数CLAFIC法も有効な手法であり, 特に, 教師データの数が少ないとき, 線形的判別手法より安定した判別結果を与えることがわかった.
改定IP-OLDFによるIP-OLDFの問題点の解消
新村秀一

Miyake & Shinmuraは, 最小誤分類数(Minimum Misclassification Number, 略してMMN)を判別基準とする最適線形判別関数(Optimal Linear Discriminant Function, 略してOLDF)を提案した. この基準は, 多くの統計家にとって過剰推定(オーバーエスティメイト)あるいはパターン認識でいうOver Learnigが考えられ受け入れがたいものであった. しかし, 判別する2群がFisherの線形判別関数(LDF)の理論的前提を満たせば, LDFの誤分類数(Misclassification Number, 略してMN)はMMNと等しくなる. そこで, 教師データでこの差が大きいほど, この理論的前提より乖離する指標になることが期待される. そこで, ヒューリスティック手法(ヒューリスティックOLDF)を開発し研究したが, 計算時間や評価法などで壁に突き当たった(三宅・新村(1979)). 新村(1998)は, この問題が数理計画法(MP)の研究者が, 計算時間がかかるということで嫌っている整数計画法(IP)で定式化できることに気づき, IP-OLDFと命名し研究を再開した. 計算の爆発というブラックホールに分け入り大変であったが, MMNの集合である最適凸多様体でもってこれまで判別分析の理論で説明できないことが幾つか分かった. しかし, 「学生の生活実態調査データ」でIP-OLDFの致命的な欠陥が見つかった. 今回改定IP-OLDFというモデルを考えたことで, この問題のほか, 計算時間の短縮, 最適凸多様体のどの内点を最終的に判別関数の係数に用いればよいか, そしてそれを用いて評価データによる汎化能力の検証が可能となった. これによって, 1970年代から延々と行われてきた数理計画法による判別モデル(Stam, 1997)と既存の判別手法の比較を今後客観的に行う目処がついた.



ALL-IPによる高性能計算システムアーキテクチャ
宮澤君夫・門岡良昌

コンピュータシステムの発展により従来困難であった大量のデータ処理を低コストで実現できるようになった. しかし, 処理すべきデータ, 必要とする計算性能も飛躍的に増大している. 一方, インターネットの発展に伴い, IPネットワークの性能は急速に向上しており, コンピュータ資源の効率的な連携が重要になっている. すべてのコンピュータ資源をIPネットワークで連携することで, 高性能計算システムを実現するアーキテクチャ「ALL-IPコンセプト」を提案する. ALL-IPコンセプトを実現する要素技術である, 高性能IPスイッチ, 可用性の高いストレージアーキテクチャ, グリッドコンピューティング技術を開発し, ALL-IPによる高性能計算システムが実現可能であることを示した.



「計算機統計学」既刊目次

「計算機統計学」トップページ

学会トップページ