第1巻第1号 目次


会長就任にあたって
計算機統計学における一課題と展望 浅野長一郎
論文
パソコン端末化プログラムAKI:図形編集機能付き日本語対応システム  金藤浩司・佐々木紘・隅谷孝洋・正法地孝雄
多変量データの漢字グラフ表現とクラスタリングへの応用  平井安久・福森 護・脇本和昌
ネットワークアルゴリズムによる正確確率計算の評価 後藤昌司・古川雅史
カイ二乗確率変数の重み付き和の分布関数の計算 白旗慎吾
並べかえ検定に基づく応答曲線の比較 浦狩保則・後藤昌司
計量個人差多次元尺度構成法での布置の構成法:非類似値の2乗に基づく場合  今泉 忠
学会活動記録
第1回計算機統計学シンポジウムを顧みて 正法地孝雄
IASC国際会議報告 丘本 正
日本計算機統計学会第1回大会報告 白旗慎吾
関連学会ニュース 編集委員会
執筆要項 編集委員会


パソコン端末化プログラムAKI:図形編集機能付き日本語対応システム
金藤浩司, 佐々木紘, 隅谷孝洋, 正法地孝雄:広島大学

日本電気社製PC-9801シリーズのパーソナルコンピュータを大型計算機の端末機として活用できるようにする端末化プログラムを開発した. 本プログラムを利用することにより, パーソナルコンピュータはキャラクタ端末機としてのみならず, 日本語の入出力が可能なグラフィック端末機としても利用できる. また, グラフィック端末機として受け取った図形情報をパーソナルコンピュータに格納し, オフラインで図形の拡大および編集などが行える.
keyword{AKI, EKAKU, Graohic editor, Panning, Tektronix emulator, Zooming}
多変量データの漢字グラフ表現とクラスタリングへの応用
平井安久, 福森 護:岡山大学
脇本和昌:作陽短期大学

多変量データのグラフ表現法の一つとして漢字グラフ表現を提案する. 例題を通してこれをクラスター分析のデンドログラム表示, フェイスグラフによる表示および主成分得点のプロットと比較し, データの読み取り易さや視覚的なクラスタリングの容易さなどの面から漢字グラフ表示の有用性について考える.
keyword{Graphical representation, Cluster analysis, Multivariate data, Kanji graph, Face graph}
ネットワークアルゴリズムによる正確確率計算の評価
後藤昌司, 古川雅史:塩野義解析センター

分割表における行効果と列効果の独立性の検定には, 伝統的にカイニ乗検定が用いられている. しかし, 小標本やスパース分割表の場合に, カイニ乗検定の近似精度の低下することがよく知られている. そのような場合には, 正確検定を適用することが望ましい. 分割表の正確検定は行や列のカテゴリー数が多いときや周辺和が大きいときに, 膨大な計算時間を必要とする. 本論文では, 正確検定のための二つのアルゴリズムを紹介する. 一つは同一周辺和をもつすべての分割表を効率的に数えあげるネットワークアルゴリズムであり, もう一つは同一周辺和をもつすべての分割表を一つずつ数え上げる方法である. 二つのアルゴリズムの性能を様々な分割表の正確確率の計算に要するCPU時間に基づいて比較する. 有用なアルゴリズムの推奨を与える. さらに, 正確検定とカイニ乗検定の乖離を有意確率と分割表に含まれるゼロセルの個数との関連から評価する.
keyword{Two way contingency tables, Network algorithm, Exact test, Chi-square test}
カイ二乗確率変数の重み付き和の分布関数の計算
白旗慎吾:大阪大学 基礎工学部

同一のカイニ乗分布に従う互いに独立な確率変数の重み付き和の分布関数を, 自由度が1または偶数の場合に計算する一般公式を求める. このような確率変数では, 特性関数が簡単な形になる場合に, それを求めたのち反転して分布が求められ, 簡単にならない場合にモーメントを等しくおくことで, カイニ乗分布の定数倍やカイニ乗分布の適当な冪乗の定数倍があてはめられていた. とくに, このような確率変数の有限個の和の場合には厳密な分布関数の計算はなされていなかった. ここでは特性関数を, 複素積分と留数定理を用いて強引に求める. 求められた式は, とくに有限個の場合に容易に用いることができる. 例として, 累積カイニ乗統計量の分布を計算した.
keyword{Cumulative chi-square statistic, Cumulative distribution function, Integral in complex domain, Residue theorem}
並べかえ検定に基づく応答曲線の比較
浦狩保則, 後藤昌司:塩野義解析センター

本論文では, 相対的に短期の経時観測値に基づき数個の処理を比較する問題を考察する. このような比較では, 応答事象の特性, 経時観測値の分布特性, 観測値の完備性などを考慮することが重要である. 計量応答に対する単一変量解析法の中で, 繰り返し測定値の分散分析が最も広範に用いられてきている. この分散分析を適用する場合に, 通常経時観測値の独立性, 等分散性および正規性が仮定される. 応答曲線の並べかえ検定は, パラメトリック解析法におけるこのような制約を緩和するために提案されている. ここでは, 並べかえ検定の性能と特徴を, 繰り返し測定値の分散分析を対照として評価する. 個体の経時観測値ベクトルが多変量正規分布に従うことを仮定し, 処理効果の有意性検定における第1種の過誤率と3種類の対立仮説のもとでの検出力を指標としたシミュレーションにより, これら2方法の性能を比較する. また, 経時観測値の独立性あるいは等分散性の仮定が崩れた場合に両方法の性能も検討する. この検討は両方法を適用するうえで有益ないくつかの示唆を与えるであろう.
keyword{Randomization analysis of response curves, Analysis of variance of repeated measurements, Simulation, Type I error rate, Power}
計量個人差多次元尺度構成法での布置の構成法:非類似値の2乗に基づく場合
今泉 忠:青山学院大学 理工学部

計量個人差尺度構成法のモデルとして重み付きユークリッド距離モデルが用いられることが多い. モデルのパラメータを推定するための方法として非類似値を変換した値から分析する方法がある. その一つとして非類似値の2乗値に基づいてモデルのパラメータを推定する場合がある. この方法に基づくものとしては, Bloxomの方法, Carroll & Changの方法, Takane, et al. やde Leeuw & Pruzanskyの方法などがある. しかし, これらの方法では変数変換によるバイアスなどは考慮されていない. そこで, バイアスを考慮した解法を提案する. 推定法としては非類似値の2乗値について最小2乗法を用いる場合に, その近似解を求める方法を提案する. 人工データヘの適用とモンテ・カルロシミュレーションでの結果を示す. その結果は, ここで提案した近似解法が有効であることを示唆する.
keyword{Multidimensional scaling, Squared dissimilarity, Individual difference, Least squares method}

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